桔梗吟行のいざない

平成26年度の
入選作品

桔梗と矢田川流域・ジオパーク観光の雑詠

2014年6月20日-11月30日まで募集した受賞作品

1994年に開催された「但馬・理想の都の祭典」から20年目となる2014年をきっかけに、地域の資源を見つめ直し、但馬全域で新しい地域づくりを目指す「夢但馬2014」のなかで、「桔梗吟行のいざない」として遍照寺の桔梗、矢田川流域、ジオパークの吟行を呼びかけ、俳句募集を行いました。

本堂外観

入選作品一覧

桔梗大賞

生も死も 仏の慈悲や 桔梗花 川戸 節子 豊岡市
選評 澤井 洋子 人は、皆、生と死の狭間に生きております。いや、生かされていると言った方がよいでしょう。遍照寺の寺苑一面に咲く清らかな桔梗の花を見たとき、作者は仏陀の愛に大きくつつまれていると感じたのでしょう。来し方もこれから先も、思い悩むことが小さな事に思え、桔梗の花に出会ったこの一瞬の一期一会の時をしみじみと有難く思われた。眼前の写生を一歩出て、自己の内面へと進み、仏様への感謝の念が口をついて出たような一句です。

一席

山寺の 一期一会の 桔梗かな 小林 啓作 豊岡市
選評 小杉 伸一路 遍照寺と詠まず山寺としたことにより、句が深まった。読者は、自分の記憶の中にある山寺の桔梗を連想するだろう。

二席

御仏を 囲みて桔梗 咲きにけり 西村 静乃 豊岡市
選評 小杉 伸一路 紫という高貴な色が御堂を囲んで咲く美しさ。清々しい光景が描けた。
まさをなる 空から落ちて 猿尾滝 江藤 隆郎 神戸市
選評 岡部 榮一 日本の滝百選にも入っている猿尾滝。滝は夏の季語。水が真っ青な空の一点から落ちて来るという掴み方が俳句的です。写生の句。
※順不同。再読み込みで並び変わります。

三席

魅せられし 桔梗の花の 聖地かな 林田 磯子 香美町
選評 小杉 伸一路 「かな」という切字で、桔梗の聖地と言い切ったところが良かった。
水音に 育つ桔梗の 清すがし 黒坂 扶美子 豊岡市
選評 澤井 洋子 香美町は水の豊かな所である。冬は雪解け水が轟くように流れるが、夏ともなれば蛍や鮎を楽しむ事が出来る。桔梗寺にも山水が引かれ鯉が泳ぐ池がある。自然に恵まれた環境でBGMのような水音に育つ桔梗は見る者の心も癒してくれる。俳句は、目で見るものだけでなく、耳で聞こえる物も大事である。五感を働かせて詠まれた臨場感のある一句である。
境内に 無垢の静けさ 白桔梗 大治 鏡子 出石町
選評 岡部 榮一 無垢と白桔梗はぴったり過ぎます。静けさをいれて和らぎました。
※順不同。再読み込みで並び変わります。

選者特選

澤井 洋子 選

紫に佇てば 白恋う 桔梗花 松下 恵美子 豊岡市
選評 澤井 洋子 間近で見る桔梗の花の玲瓏とした美しさに心を奪われたのでしょう。紫の桔梗は、素晴らしい、然し白い桔梗も捨て難いと、まるで蝶々が花の間を飛び回るように作者の心は揺れ動いています。そういった作者自身の思いを「紫に佇てば白恋う」と具象化して表現しています。誰しもがやはり作者と同じように思って共感を覚えるのでしょう。

岡部 榮一 選

冬の尚 お堂の下の 蟻地獄 佐藤 久子 明石市
選評 岡部 榮一 蟻地獄はウスバカゲロウの幼虫。夏の季語です。成虫になるまで二~三年、砂の中で過ごすものもいる。乾いた砂を好みお堂の下などに巣を作る。冬は、活動しないがすり鉢状の巣が残っている。

小杉 伸一路 選

声明に 紫ほどく 桔梗かな 高橋 久美枝 朝来市
選評 小杉 伸一路 紫をほどく、という表現に作者の感性を感じる。声明、紫、桔梗という表現も響き合って美しい。

ジオパーク特別賞

船脚を 奇岩にゆるめ 夏惜しむ 宇利 和代 西宮市
選評 岡部 榮一 晩夏の香住海岸のジオパークの遊覧船。俳句では八月七日頃が立秋です。一般的な感覚では夏惜しむは、八月の終わりに近い夏休みが終わる頃の季節です。少し海の風を涼しく感じながら夏を惜しむ心が良く出ています。

佳作

一株の 桔梗の宿す 気品かな 藤澤 みか子 神戸市
静けさを まるき蕾に 桔梗花 増田 節子 豊岡市
三代の女 船長 秋の航 片岡 徹也 神戸市
余部の 一番列車 朝焼けす 江見巌 相生市
七花寺の 一寺に咲きし 桔梗かな 黒田 謙二郎 豊岡市
波しぶく 但馬松島 夏深し 小林 伊久子 奈良県
庭中に 満つる金剛 石蕗の花 岸本 紀雄 神戸市
秋氣満つ 水音高き 法の庭 宮本 露子 西宮市
俳縁を 賜る一会 花桔梗 小柴 智子 神戸市
九天に あかりを灯す 桔梗花 小西 幸子 竹野町
断崖の 美しき節理や 雲の峰 横田 恵 生駒市
群がりて 地蔵を囲む 桔梗かな 中島 保 姫路市
山寺や 桔梗に渡る 夕の風 角野 京子 堺市
しっとりと 慈雨の玉置く 桔梗かな 渋谷 みや子 豊岡市
日の濃さに 海エメラルド 海月浮く 冨安 トシ子 奈良市
猿尾滝 見上げおのれは 小さくなる 斉藤 浩美 東海市
花のてら 桔梗の声 石の声 松島 恵美子 豊岡市
一閃の 冬日ジオパークの 洞門 仲加 代子 三田市
桔梗の 日ごとに藍の 深まりぬ 川口 眞生 豊岡市
練切も 茶托も 桔梗風涼し 藤田 壽穂 奈良市
桔梗の 風はむらさき 遍照寺 水間 千鶴子 神戸市
蝉しぐれ 堂を包みて 静かなる 椋 則子 竹野町
※順不同。再読み込みで並び変わります。