2017年6月20日-11月30日まで募集した受賞作品
たくさんの応募を頂き有難うございました。
今回は投句者が多く、臨場感のある句が揃っていました。地元以外の方の吟行句はやはり一度訪れて詠まれておられる句が力強くて良かったと思います。通り一遍の写生ではなくその土地の人の気持ちになって詠むということが大事です。
入選作品一覧
桔梗大賞
人の和に 包まれ育つ 花桔梗 作 上田晴彦 豊岡市
選評 遍照寺(桔梗寺)の俳句が当初は続くかどうか心配でしたが、関係者各位の熱意で四年を迎えることとなりました。最初からつぶさにその様子をご覧になっていた作者は、桔梗の咲く庭に句碑が建つのはヒューマンリレイショニズの繋がりの強さであり、それに応えて桔梗の花は年々見事に開花して訪れる人の目を愉しませていて、まるで人の和に包まれて育っていると感じられました。広辞苑で「和(わ)」を調べますと「おだやか・なごやか」、また、「仲良くすること」「調和すること」等の意味があります。これからもますます和が広がって行くことを願われて詠まれた一句です。
一席
額衝けば ほほゑむ仏 花桔梗 作 江藤隆郎 神戸市
選評 額づく作者の気持ちに呼応して仏様が微笑まれたように見えました。作者の悩みを癒すかのように桔梗が咲いています。
選評 水音がするのは遍照寺に限った事ではない。全国各地の寺でも、迸る水音が聞こえる。遍照寺だけの固有の事であれば、全国の読者には分からないが、読者の近所で水音が聞こえる寺があれば、この句はその寺の事かと思う。句に広がりを持たせたところが見事だ。
桔梗寺 五欲あずけて 花の中 作 稲垣多美子 豊岡市
選評 五欲には感覚的欲望と財・色・飲食・名・睡眠を求める欲があります。花の中に佇んでいますとそんな五欲は忘れ去られてしまいます。
まっすぐに 余さず生きて 白桔梗 作 大谷千秋 姫路市
選評 正直に力いっぱい生きて来て、何の悔いもない人生。自分の人生に対する満足感、達成感が感じられる。その万感の想いを、白桔梗と言う季題(季語)が余すところなく語ってくれる。季題(季語)の力を信じたところにこの句が生まれたのである。
平家谷 瀬戸の波恋う 昼の虫 作 平石悦子 豊岡市
選評 源氏に敗れた平家の落武者がひっそりと棲む平家谷。北国の寒さに耐える生活を繰り返し、また秋が来て、平家が隆盛を極めた頃の瀬戸を懐かしく思い出します。
選評 余部の鉄橋は橋梁になってエレベーターで上がり、海が見渡せるようになりました。
海と言えば夏と思いがちですが、又、趣の違う冬の日本海を眺めての一句です。
澤井 洋子 選
桔梗に 座して独りの 青浄土 作 稲田日出男 豊岡市
選評 澤井 洋子氏 数多の桔梗に対峙して坐していますと、桔梗の花が語りかけてくるような気持ちになりました。仏様の浄土のように青々とした桔梗(きちこう)の花の浄土に居る清浄無垢な気持ちです。中七を「の」にしたことにより、孤独ではなく他の人も受容しようとする作者の心が表現されています。
岡部 榮一 選
浜木綿や 海女を守れる 古社 作 谷川さと 豊岡市
選評 岡部 榮一氏 島国であれば漁業は食料確保の必須の手段です。古来から肉を食べる風習の薄い民としては魚類や貝類は貴重なタンパク源であったことは言うまでもありません。海女は古くからある女性の仕事です。海に潜(かず)くことは大変な重労働です。鮑や栄螺を捕るシーズンが来れば先ず安全と豊漁を祈願するのが一番の行事でしょう。漁村には漁村の農村には農村の生活の歴史があるのです。それがこの国の四季の中に息づいているのです。古社は脈々と続く漁村の歴史です。
小杉 伸一路 選
歴史秘む 古刹の大樹 ほととぎす 作 藤澤みか子 神戸市
選評 小杉 伸一路氏 ほととぎすは死出の山路を契るという。この言葉により、句の舞台が山寺であると想像される。歴史秘む、大樹、という言葉により、古い大きな寺であることが連想される。俳句は連想の文芸。その起爆剤になるのが季題(季語)である。この句の「ほととぎす」という起爆剤の力を味わってほしい。
ジオパーク特別賞
この星の 語部となり 露の洞 作 小柴智子 神戸市
選評 賞の特性を勘案し、玄武洞を詠んだ句を選んだ。この星の語部という言葉で、洞窟の悠久の歴史を連想させ、露という言葉が、変化して止まない洞窟の有様を語る。地域の歴史的な遺産を巧みに詠んだ作品である。
もてなしの 極みと咲けり 花桔梗 作 藤岡美恵子 朝来市
走り根を 埋む寺苑の 秋海棠 作 仲加代子 三田市
ほととぎす 一山迫る 峠越え 作 安田尤之 豊岡市
暮れてなほ 桔梗あかりの 伽藍かな 作 水間千鶴子 神戸市
亡き母の 細きうなじや 白桔梗 作 池上孝子 豊岡市
快楽の 目覚め清しき 花桔梗 作 池田喜代持 高砂市
一宇守る 桔梗の花の 穢れなし 作 岩水ひとみ 神戸市
千株の 桔梗を咲かせ 坊が妻 作 長谷川悦子 豊岡市
天啓の ごとく咲きそむ 白桔梗 作 木村オサム 神戸市
境内に 朝の箒目 桔梗咲く 作 松下恵美子 豊岡市
石仏の 口のほころび 秋海棠 作 三木和子 豊岡市
艶やかに 仏の加護や 桔梗花 作 黒坂扶美子 豊岡市
明日ひらく 蕾ととのひ 白桔梗 作 吉岡八重子 豊岡市
但馬路の 厳寒に堪ゆ 桔梗花 作 西浦輝子 三田市
爽やかや 笑顔の僧の 桔梗寺 作 嶋田静子 三田市