2015年6月20日-11月30日まで募集した受賞作品
但馬の資源を見つめ直し、新しい地域づくりを目指すなかで、「桔梗吟行のいざない」として昨年に続き「遍照寺の桔梗・矢田川流域・ジオパークの吟行」を呼びかけ、俳句の募集を行いました。全国よりたくさんの応募を頂き、第二回の入選作品が決まりました。
入選作品一覧
桔梗大賞
訪ね来て 桔梗の寺に 解く心 作 山谷 彰子 西宮市
選評 小杉 伸一路氏 どのような思いで桔梗の寺を訪れたのかは分からないが、心に掛かることが有ったのだろう。しかし桔梗の花を見ている内に、その心が解れて来たのだった。桔梗の紫は癒しの色と言われる。まさに桔梗の寺遍照寺ならではの功徳と申すべきである。
一席
手入れよき 庭の桔梗や 遍照寺 作 増田 節子 豊岡市
選評 澤井 洋子氏 桔梗寺遍照寺さんへの挨拶句。「手入れよき」と具体的に表現しているので、隅々まで心配りされた庭と桔梗を育てている人の心意気が感じられる句である。
選評 岡部 榮一氏 慧日(えにち)は、仏・菩薩の広大無辺なこと。日光にたとえていう語。桔梗に陽の光が遍く降り注いでいるさま。桔梗寺に相応しい句。
白桔梗 写経の筆の よどみなく 作 森垣 逸乃 豊岡市
選評 小杉 伸一路氏 桔梗の白い花と写経用紙の白さが清浄感を生んでいる。純真無垢な白の世界を飛翔する天女の様に、よどみない筆の動きが軽やかである。白と黒とのコントラストが美しい世界を描き出している。
切戻す 桔梗の伸びを 日々見つめ 作 住友 和子 加古川市
選評 澤井 洋子氏 一度咲いた桔梗を切り戻すと、もう一度花を付けて9月初旬まで楽しむことが出来る。次の花が咲く頃には、また大勢の人が見に来てくれるだろう。早く早くと心待ちにしている様子がよい。
手を打たば 開きさうなる 桔梗かな 作 大治 鏡子 出石町
選評 岡部 榮一氏 五角形にはち切れそうに膨らむ桔梗の蕾を臨場感よく捉えている。
苔も景石も 景なり 景なり 作 岩水 ひとみ 神戸市
選評 小杉 伸一路氏 苔と石と花桔梗だけを描き、どんな庭であるかは語っておられないが、情景が見えて来る。苔も石も景とは言ってみれば当たり前のこと。しかし、有りのままの姿にこそ真の美しさが有るのだ。そのことを改めて訴えられたのである。
澤井 洋子 選
雨上がり 水滴そっと 抱く桔梗 作 黒坂 扶美子 豊岡市
選評 澤井 洋子氏 雨上がりの桔梗の花の様子を見て感じたことが、具象化され平明に詠まれている。周囲の木々の彩、日の光等が映る水滴をそっと抱くのは桔梗のみならず作者自身の心の反映でもある。
岡部 榮一 選
大黒の 作務衣しとどや 露桔梗 作 竹下 登 城崎町
選評 岡部 榮一氏 桔梗は奥様が丹精を込めて作っている由。朝早くからの作業に作務衣も露に濡れているさま。濡れるのも厭わない桔梗の花への愛情が色濃く伝わる。
小杉 伸一路 選
声までも 紫紺となりて 桔梗寺 作 斉藤 浩美 東海市
選評 小杉 伸一路氏 遍照寺には数え切れぬ程の桔梗が植えられている。一説には千株とも言われる。寺苑でその美しさを称えているとその声まで桔梗の色になると詠われた。美しい詩だ。桔梗浄土とはこの事であろう。
ジオパーク特別賞
夕菅や 漁り火増えし 香美の海 作 川口 眞生 豊岡市
選評 岡部 榮一氏 夕菅は、夕方から咲いて翌朝の昼頃には閉じることからの命名。花は黄色。香住海岸には二カ所の自生の群落がある。香美の夏の漁り火は烏賊釣り船、夕方の出航で点る沖の漁り火は、風物詩。夕菅が咲き始めるころと漁り火が増え始めるころを上手く捉えている秀句。
荒波の 削る奇巌や 天高し 作 藤澤 みか子 神戸市
さざれたる 石もみ佛 石蕗咲ける 作 尾田 美智子 鳥取市
経文は 漢文字ばかり 花桔梗 作 池田 喜代持 高砂市
鐘の音や 浄土に揺るる 花桔梗 作 田村 紀子 豊岡市
山門を 入れば桔梗の 五百千 作 中島 保 姫路市
ふっくらと 明日を包む 桔梗花 作 岸 慶子 丹波市
法話聴く 姿勢にも似し 桔梗かな 作 小崎 正夫 堺市
本堂へ 左右の桔梗に ある順路 作 西出 茂子 神戸市
観音へ 桔梗の五弁 開く音 作 高橋 二三子 香住区
蓮の実の 飛んでしづかな 寺の昼 作 水間 千鶴子 神戸市
水中に 仏の在す 猿尾滝 作 松下 恵美子 豊岡市
梵鐘の 音色にゆるる 桔梗かな 作 高橋 和代 橿原市
句碑ほとり 白紫の 桔梗咲く 作 森 道子 村岡区
深山寺の 空を明るく 白桔梗 作 長谷川 喜美 香住区
遍照寺の 庭を満たして 花桔梗 作 仲 加代子 三田市
桔梗花 空青ければ 愈濃し 作 塩見 成子 神戸市
どの石も 仏になりて 寒和む 作 福田 恵津子 香住区
小さき風 集めて苑の 釣舟草 作 坂本 玖美子 赤穂市
真言の 唱に咲き切る 桔梗かな 作 江藤 隆郎 神戸市
白桔梗 きりりと咲いて いて静か 作 北島 衛 加東市